実際の入試問題を解く際の口頭試問の使用例とは?

アテナイブログを担当しておりますKodabou(コダボウ)です。今回は、ブログ担当のKodabouが記事をお届けします。
アテナイのメディアを執筆しておりますTakataさんは物理・化学に造詣が深いので、Takataさんは大学受験の物理や化学を学術的な見地から解説しています。
でも、私、Kodabou(コダボウ)は、「物理・化学の学習に役立つ、よもやま話や様々な情報」「皆さんの勉強の気分転換になる面白い話」「皆さんの大学受験や将来に役立つ情報」「皆さんの知的好奇心を刺激するような豆知識や教養」「皆さんを励ますことができる話題」「医学部についての情報」など、よりソフトで読みやすい内容をお届けしていきます。ぜひ、気が向いたときにでも、気軽に目を通していただければ幸いです。
身近にある植物
やっと、皆さんが待ち望んだ春がやってきますね。私事になりますが、このところ忙しく、運動不足でしたので、隣町の都立公園まで出かけ、たくさん歩いて気分転換しました。曇っていましたが、久々の運動で良い気分になれましたよ。その際、サンシュユ、マンサク、ミツマタ、ウメの花が咲いているのを見ました。これから、コブシ、ハクモクレン、カンヒザクラ、サクラなどが次々に開花していきますね。
サンシュユとは、漢字で「山茱萸」と書き、中国や朝鮮半島が原産の落葉小高木です。日本へは、江戸時代に薬用植物として渡来したとされており、今日では江戸時代に薬用植物として渡来し、公園をはじめ個人宅の庭先でも目にすることがあります。薬用植物として日本に渡来したという点では、梅と同じですね、サンシュユは、春先、葉が出る前に黄色い花を咲かせ、樹木の全体が黄色いに映えるため、「ハルコガネバナ」とも呼ばれます。なんだか、お金持ちになれそうな名称ですね。
私が中学受験した当時は、上位男子校では理科で出題されるかもしれないという事で、図鑑を見て動植物の名前を覚えていったものです。中高一貫校に入ってからも、生物の先生が植物学に造詣が深く、植物のことを多角的に学びました。

アテナイなら、普通のやり方で物理・化学の点が上がらない人でも大丈夫!
医学部を目指している方や、理工系学部の受験生を含めまして、「どうしても物理・化学の点を上げないといけない」という方に、朗報です。アテナイは、他塾では使われていない独特の教授法(医学部など大学で実際に使われている方法)を採用していますので、「普通のやり方、普通の勉強では物理・化学の点が上がらない。なぜ点が上がらないのか分からないし、どこから勉強したら良いか分からない。論理的思考力など根本的な部分の改善法が見つからない」といった方でも、確実に物理・化学の成績を上げることができます。

入試問題指導に見る口頭試問の使われ方
さて本日は、アテナイで用いられている「口頭試問」というメソッドを、また別の観点からお伝えします。
では、まず、「ステップ2 応用」とは、どのような学習段階なのかを振り返っておきましょう。
ステップ 2 応用
[1] 全範囲を一巡した後に、専門用語の意味を再検討する。
化学の様々な分野を知った後に、入試標準問題を解くことで、改めて専門用語の意
味を考え、より踏み込んだ理解を得ることを目指します。
[2] 入試標準問題を解くことで、比較的長い論理的思考ができるようになる。
Tier 1 で習得した論理的思考を活かし、様々な論点をつなげることで、具体的な問題
を解くことを目指します。

では、これからご説明する入試問題を解くにあたって、生徒様が目を通しておく教材例の一部を提示させていただきます。
(教材例)
・熱化学方程式
①反応熱=(生成物の生成熱の総和)−(反応物の生成熱の総和)
②反応熱=(生成物の結合エネルギーの総和)−(反応物の結合エネルギーの総和)
①・②式を、どのような意味に用いるか、例題を通して考えてみましょう。
では、例題として扱う入試問題を提示させていただきます。
【例題】(国際医療福祉・医 2017 改)
黒鉛の昇華熱は 712 kJ/mol、C−C の結合エネルギーは 328 kJ/mol、H−H の結合エネルギーは 432 kJ/mol、二酸化炭素の生成熱は 394 kJ/mol、液体の水の生成熱は 286 kJ/mol、メタンの燃焼熱は 890 kJ/mol である。メタンおよびエタン分子中の C−H 結合の結合エネルギーは等しいとして、これらのデータを用いてエタンの燃焼熱〔kJ/mol〕を整数で求めよ。
ここでは、ステップ1 で習得した事項を踏まえたうえで、入試問題を解くための「意味」を再検討します。標準的な入試問題を用いて、解答に至る論理展開を考えていただきます。
講師が一方的に解答を述べるのではなく、生徒様の考えを促進するための「口頭試問」役に徹することがアテナイの特徴です。これにより、生徒様が考えを進めることができます。そのため、まずは生徒さんの答案を見ながら、生徒様の考え方を聞くことに徹します。
【よくある答案例 1】
各々の反応を熱化学方程式で表すと
C(黒鉛)=C(気)− 712 kJ ・・・①
C(黒鉛)+O2(気)=CO2(気)+394 kJ ・・・②
H2(気)+1/2 O2(気)=H2O(液)+286 kJ ・・・③
CH4(気)+2O2(気)=CO2(気)+2H2O(液)+890 kJ ・・・④
エタンの燃焼熱を Q〔kJ/mol〕とすると
C2H6(気)+ 7/2 O2(気)=2CO2(気)+3H2O(液)+Q kJ ・・・⑤
(・・・ここからどうしたら良いのかわからない。)
生徒さんの答案を見て、生徒さんがたどった考えの道筋を一通り聞いてから、「口頭試問」を始めていきます。以下に、実際に講師がどのようにして口頭試問役に徹していくのかを、実例を示しながらご説明します。
【口頭試問例】
講師:①~⑤の式は正しくできています。どのような考え方で作りましたか。
生徒:教科書で学んだ通り、熱化学方程式を作って、それを連立方程式のように
解いて、答を求めようとしました。
講師:わかりました。確かに、標準的な解法として教科書で示されていますね。
さて、どのようなことで行き詰まりましたか。
生徒:①~④の中にエタン C2H6 の項がないので、これだけでは⑤のエタンの項が作れ
ません。
講師:そうですね。このままでは作れません。それでは、どうすればエタンの項目が
作れますか。
生徒:・・・できるかどうかわかりませんが、問題文に結合エネルギーのヒントがあ
って、それを使っていないので、⑤の式を結合エネルギーで考えてみます。
講師:良いですね。それでは作ってみてください。
生徒:・・・教科書で、「反応熱=(生成物の結合エネルギーの和)ー(反応物の結
合エネルギーの和)」という式があったので、⑤の式について、次のように作
ってみようとしたのですが・・・
Q = (2QC=O + 3 ⋅ 2QO−H) − (328 + 6QC−H +7/2 QO=O)
( QX−Y,QZ=W は,X−Y,Z=W の結合エネルギー〔kJ/mol〕)
ここで重要なことがあります。生徒様が考えて回答したことは必ず受け止めます。その上で、行き詰まったときに限り、別の方針を促します。
講師:どうしましたか。
生徒:与えられていない結合エネルギーが多すぎて、無理そうです。
講師:確かに、これら 4 種類の結合エネルギーは、問題文に与えられていないので、
この方針でいくのは難しいかもしれませんね。他の方法を考えてみましょう。
エタンの項を作るという方針は正しいと思いますので、エタンの項を何か別の
方法で作ってみましょう。
生徒:・・・エタン分子の結合が C−C、C−H でできていて、C−C は 328 kJ/mol と与えられています。
講師:はい。
生徒:問題文に「メタンおよびエタン分子の C−H 結合の結合エネルギーは等しい」と
かかれてあって、まだわかっていないのですけど、おそらく使うと思うので、
次の式を作れそうです。(論理の起点を考える部分は、問題文が根拠となると考えら
れるので、その解釈に成功しています。)
2C(黒鉛)+3H2(気)=C2H6(気)+Q1 kJ
Q1 = (328 + 6QC-H ) − (2 ⋅ 712 + 3 ⋅ 432)・・・⑥
( Q1〔kJ/mol〕エタンの生成熱、 QC-H 〔kJ/mol〕C−H の結合エネルギー)
講師:この式は、何を表していますか。
生徒:エタンの生成熱を 〔kJ/mol〕として、熱化学方程式を作り、先ほど用いた
「反応熱=(生成物の結合エネルギーの和)ー(反応物の結合エネルギーの
和)」を用いました。
講師:わかりました。 QC-H が6倍されているのはなぜですか。
生徒:エタンの構造式を書くと、1 分子あたり 6 個の C− H 結合があるからです。
講師:正解です。ここまで正しく理解して表すことができていますので、続けて
ください。
(このように細かく質問して回答していただくことで、生徒様自身の考えを明確化するとともに、「正しい」という評価をもって、自信をつけていただくことが可能です。講師と生徒様が口頭試問のやりとりをしていく中で、生徒様の表情に活力が戻り、頭の中の知識網がさらに増えていきます。生徒様が口頭で説明すればするほど、脳内の知識網が増えていきます。)
生徒:それで、おそらくですけど、メタンも同じことをすると思うので
C(黒鉛)+2H2(気)=CH4(気)+Q2 kJ
Q2 = 4QC-H − (712 + 2 ⋅ 432)・・・⑦
( Q2 〔kJ/mol〕メタンの生成熱)
メタン 1 分子に C− H が 4 個あるので、QC-H は 4 倍しています。
講師:良いですね。ここからどうしましょう。
生徒:・・・あ!生成熱だ!
(論理をつなごうと努力されているとき、頭の中で稲妻が走るように、一気に理解される瞬間が到来することがあります。)
講師:どうしましたか。
生徒:反応熱=(生成物の生成熱の和)−(反応物の生成熱の和)です。これを、
メタンとエタンの式に用いればできるかもしれません!
講師:わかりました。やってみてください。
(5分後)
生徒:できました!
講師:はい。それでは、説明してください。
生徒:はじめに、エタンとメタンの燃焼の式(⑤・④)、から、次の式を作ります。
Q = (2 ⋅ 394 + 3 ⋅ 286) − Q1・・・⑧
890 = (394 + 2 ⋅ 286) − Q2・・・⑨
これは、反応熱=(生成物の生成熱の和)−(反応物の生成熱の和)から作れる
式です。
⑨から、 Q2 = 76kJ/mol とわかるので、⑦に代入して計算することで、
QC-H =413 kJ/molとわかります。これを⑥に代入して計算することで、Q1=86 kJ/molとわかります。最後に⑧の式に代入して
Q = (2 ⋅ 394 + 3 ⋅ 286) − 86 = 1560
と計算できるので、求める答えは 1560 kJ/mol です。
上記の例では、生徒様の頭の中で諸要素が論理的につながり、口頭試問を通して講師がヒントを出していくだけで、生徒様自身の力で正答にたどりつけています。生徒様が諸要素を論理的につなげて理解された後、比較的長い説明を口頭でしていきますが、このとき、基本事項と論理的思考網が、より強く定着していっております。
講師:正解です。大変よくできました。
生徒;やった!
講師:それでは、本問の解答を振り返って、どのような論理で解答できたかまとめて
みてください。
生徒:はい。メタンとエタンの燃焼熱について、「(生成物の生成熱の和)−(反応物
の生成熱の和)」から式を作ることができます。このとき、メタンとエタンの
生成熱がわかればよいのですが、このときに「(生成物の結合エネルギーの
和)−(反応物の結合エネルギーの和)」を用いると、結合エネルギーや昇華熱
のデータをまとめて使って表すことができますし、未知数があったとしても、
文字でおいておき、方程式を作っておきます。あとは、未知数の値を求め、作
っておいた方程式に代入していくことで、値を求めることができます。
講師:大変良く理解しておられます。

以上のように、正解に辿り着いたあと、もう一度、論理展開を口頭で説明していただくことで、脳に強く焼き付き、類似問題でも同様に解いてみようとする動機を作ることができます。
以上の内容、いかがでしたか。
口頭試問によって、生徒様自身の考えが明確化されていき、諸要素が論理的につながることで、自力で考えて「正しい」答えにたどり着きます。その結果、自信をつけていただくことが可能です。それだけでなく、その過程で、生徒様の頭の中の知識網や論理的思考が深まっていき、基本知識や入試問題におけるその応用方法を定着させることが可能なのです。
投稿者プロフィール

- 根っからの語学マニア。大学院では、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ラテン語、古典ギリシャ語、韓国語を学んだ。日本にいる外国人と外国語で話すより、現地の国へ行って外国語で話すのが好き。
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